2016年02月16日

PERSONA3 The Movie #4 Winter of Rebirth

〈2016年映画感想8本目〉
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PERSONA3 The Movie #4 Winter of Rebirth
2016年 日本 105分
監督:田口智久
配給:アニプレックス
声の出演:石田彰,豊口めぐみ,鳥海浩輔,田中理恵,緑川光,能登麻美子,坂本真綾,緒方恵美,中井和哉,田の中勇,沢城みゆき

 テレビゲームを原作とした『PERSONA3 The Movie』4部作の最終章。望月稜時がその正体を明かしてから,結城理たちが最後の戦いに勝利するまでが描かれます。これまでの3作同様に総集編という印象は拭えませんでしたが,それでも今回は描かれる期間が短かった割には上映時間が長かったので,或る程度はしっかり書き込まれたように思えます。特にニュクス・アバターとの決戦はテレビゲーム版をほぼ再現されたというのが素晴らしい。アルカナを変える度に姿と戦術を変えるニュクス・アバターを相手に対応するペルソナで対峙する理が実に格好いい。尤も,テレビゲーム版とは異なり,ニュクス・アバター戦から既に理ひとりでの戦いとなっています。理をニュクス・アバターと対峙させる為に血路を切り拓く仲間たちが頼もしかったです。なお,ヒロインは完全にアイギスとなっていました。それはそれで物語上は十分に納得出来ますが,ゆかりの扱いがあまり良くなかったのは残念。原作通りと言ってしまえば,それまでなのかもしれませんけれども。現実を目の当たりにして葛藤する仲間たちの姿は良かったです。その葛藤を乗り越えて,希望を見出す姿が本当に眩しく思えました。

 今回は過去の3作ではそれ程目立つところのなかったエリザベスが重要な役割を担っていたのが嬉しい。アイギスとは違う形で,彼女もまたヒロインだったのでありましょう。このあたりの描写はPSP版の『ペルソナ3ポータブル』を楽しんだ身としては懐かしく思えました。一方で残念だったのは仕方の無い面はあるのですが,仲間たちのペルソナが進化する様が一気にまとめて扱われたこと。このあたりは前作でヘルメスからトリスメギストスに進化した順平が一番優遇されていたような気がします。また,タカヤとジン,ふたりになったストレガとの最終決戦が理抜きとなったのはやはり残念な気がしますが,これはこれで物語としては成立するのでいいのかなあ。個人的に一番嬉しかったのは理が最後に辿り着いた“命の答え”が明確にされなかったということ。これはやはり『ペルソナ3』に触れた人全てが自分で手に入れるべきものでありましょう。その姿は千差万別でいいと思います。なお,この受け取り方で『ペルソナ3』の結末が希望にも絶望にも別れるのが興味深いところ。自分はそれでもなお命と言うものに希望を見出したいと感じました。結末はゲーム通り。これも下手に改変されなくて良かったです。また,故田の中勇が演じるイゴールの言葉が非常に意味深でありました。これは勿論意図されたことでありましょう。

 良くも悪くも『ペルソナ3』の完全映画化と言ったところでありました。総集編ということは,即ち名場面集でもあるということ。存分に内容が詰め込まれた映画化だったと思います。余計な要素を削ぎ落としても,なおこの内容となってしまうのは仕方がないところでありましょう。個人的にニュクス・アバターとの闘いだけでも十分に満足した気分でありました。最後に流れるED曲が『キミの記憶』というのも思わず涙腺が崩壊しそうになります。此処まで観続けたことが十分に満足いくものであったことは幸いでした。非常に素晴らしい映画化だったと思います。それだけで満足であります。
posted by 森山樹 at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年02月09日

手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー THE MOVIE

〈2016年映画感想7本目〉
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手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャーTHE MOVIE
2016年 日本 64分
監督:中澤祥次郎
配給:東映
出演:西川俊介,松本岳,中村嘉惟人,矢野優花,山谷花純,多和田秀弥,志尊淳,平牧仁,小島梨里杏,横浜流星,森高愛,長濱慎

 毎年恒例のスーパー戦隊対決もの作品。VSと銘打たれているけれども,実際に戦うわけではないのもお約束。更に新たなスーパー戦隊である動物戦隊ジュウオウジャーも客演しています。例年よりも出番が多かったように思うのは気の所為かなあ。突っ込みどころは満載ですが,何はともあれ番組開始は楽しみにしています。その佇まいはかなり強烈でしたけれども。しかし,客演の筈のジュウオウジャーにやられてしまう妖怪ワニュウドウは些か扱いが悪かったです。物語としてはいつも通りかなあ。先輩のスーパー戦隊としてニンニンジャーを導くトッキュウジャーが印象深かったです。最初は頼りなかったのに此処まで成長したのかあと感慨に耽ってしまいました。覇王シュリケンジンとビルドレッシャーが合体する覇王トッキュウダイオーの衝撃も素晴らしい。このあたりは例年通りと言えますが,最初から構想を織り込み済みなのかと穿った見方をしてしまいます。個人的にはシャドーライン幹部の闇クローンの扱いの悪さが泣けました。再生怪人はこんなものとわかってはいるのですけれども。そんな中でも一段と不憫な霧隠ネロ才蔵には笑ってしまいました。和傘の望月ノア千代女は結構好みだったけれどなあ。

 物語はアカニンジャーとトッキュウ1号が中心。アカニンジャーから誕生させられた闇アカニンジャーは本篇でやっても良かったような気がします。一度は消滅したアカニンジャーを復活させるのがイマジネーションというのは如何にもトッキュウジャーが絡む理由に相応しくて好印象。単純にお祭り映画というだけでなく,こういった理由付けがあってこそ楽しめるというものです。敵としてはニンニンジャーからは十六夜九衛門だけの登場というのは如何にも寂しい。尤も,牙鬼幻月を登場させるわけにもいかないので仕方がないところか。この種の対決もので前作の敵組織が中心となるというのは面白い構成に思えます。そんなわけで主敵としてはシャドーラインの残党である闇博士マーブロが登場。シャドーラインは全滅したわけではなかったのですね。このあたりは何も語られることがなかったけれども。グリッタ嬢くらいは登場しても良かったような気がします。闇博士マーブロ自体は割と魅力的ではありました。但し,毎度のことながらお笑い芸人に配役された人間体は不要に思えます。このあたりはどういう層に需要があるのか理解に苦しみます。スーパー戦隊側の描写は素直に満足。ニンニンジャーとトッキュウジャーが入り交ざってのチーム編成が面白かったです。トッキュウ2号はちょっと美味し過ぎる気もしましたけれども。トッキュウ6号の扱いの悪さは最早定番ですね。

 例年よりも満足度は高かったように感じます。スーパー戦隊側の絡みが明確に描かれていたのが原因かなあ。対立軸がなかった分をふたつの戦隊,というよりもアカニンジャーとトッキュウ1号との関係に注力出来たのかもしれません。惜しむらくはやはり敵が事実上闇博士マーブロだけだったということか。妖怪ワニュウドウはもう少し上手く使って欲しかったところです。十六夜九衛門の腹黒さは存分に発揮されていたのですけれどね。何はともあれ,楽しい作品でありました。毎年,この水準にあれば言うことはありません。
posted by 森山樹 at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年02月06日

クリムゾン・ピーク

〈2016年映画感想6本目〉
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クリムゾン・ピーク
CRIMSON PEAK
2015年 アメリカ/カナダ 119分
監督:ギレルモ・デル・トロ
配給:ユニバーサル/東宝東和
出演:ミア・ワシコウスカ,トム・ヒドルストン,ジェシカ・チャスティン,チャーリー・ハナム,ジム・ビーヴァー,バーン・ゴーマン,レスリー・ホープ,ダグ・ジョーンズ

 20世紀初頭を舞台としたゴシック・ホラーです。監督がギレルモ・デル・トロということで機会な化物が登場するのも嬉しい。ゴシック・ホラーということで恐怖要素も勿論あるのですが,何処かダーク・ファンタジィな側面も有しています。そのあまりにも美しく残酷な描写がたまらなく好みであります。後半の舞台となるシャープ家の屋敷が素晴らしく魅力的。ほぼ廃屋に近い惨状ではありますが,心を捕えて離しません。物語としてはニューヨークとシャープ家の屋敷での出来事がほぼ等分といった塩梅でしょうか。徐々に忍び寄る魔手に翻弄される美女の物語が描かれます。その物語は残酷で救いようのない部分もあるのですが,貫かれる愛という側面を有しているのも事実。それが故に却って極上の美を醸し出しているようにさえ思います。特に後半は少しずつ屋敷の異常性が明らかになってくるに連れて,その全貌が次第に顕わとなり,全く飽きさせることなく結末へと突き進んでいきました。この最終盤の怒濤の展開は本当に素晴らしかった。狂気を帯びて行く物語ではありますが,その美しさ故に後味が存外に悪くないものとなっています。言うなれば,暗黒のおとぎ話といったところでありましょうか。ギレルモ・デル・トロ監督の趣味は自分と共通する部分が多いのだなあと再認識いたしました。

 小説家を目指す主人公イーディス・カッシング役はミア・ワシコウスカ。その美貌と世間知らずぶりが大変に魅力的。尤も,それ故に狙われることになってしまうわけですけれども。個人的には眼鏡姿を多く披露してくれたことが嬉しかったです。特に前半の色気のない眼鏡美人ぶりは最高でありました。彼女に予言を与えた母の幽霊に対する説明が殆どなかったのは残念。特殊な血統というわけでもないようですけれども。そのイーディスに婚約を申し込む旧家の貴公子トーマス・シャープ役はトム・ヒドルストン。線の細さが役回りに最適であります。最初から胡散臭さが前回でしたが,最後の彼の決断が物語に後味の良さを与えているような気がします。トーマスの姉であるルシールを演じるのはジェシカ・チャスティン。此方も登場時から胡乱な雰囲気を漂わせていましたが,狂気を帯びてくると美貌が更に際立つのが素晴らしい。或いはこの物語はイーディスとルシールによるトーマスを巡る物語であると断じてもいいのかもしれません。当初は此処まで重要な存在になるとは思ってもいませんでした。イーディスの父の死の調査を契機に事態の真相に辿り着く医者のアラン・マクマイケル役はチャーリー・ハナム。重要な役割を与えられている割には影が薄いのは気の所為か。特に中盤以降は単独での場面が多かったからかもしれません。

 かなり自分好みの作品で大変楽しむことが出来ました。少しずつ狂っていく屋敷の中の世界があまりにも魅力的でありました。ミア・ワシコウスカとジェシカ・チャスティンという美女ふたりの共演も実に嬉しい。舞い散る雪が鮮血にも似た紅に染まっていく場面は思わず息を呑むばかりでありました。その中で斧とシャベルによる対決というアクションも用意されています。ゴシック・ホラーとダーク・ファンタジィというふたつの要素を見事に両立させた素晴らしい作品であったと思います。非常に満足でありました。
posted by 森山樹 at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年02月05日

パディントン

〈2016年映画感想5本目〉
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パディントン
PADDINGTON
2015年 イギリス/フランス 95分
監督:ポール・キング
配給:キノフィルムズ
出演:ベン・ウィショー,ヒュー・ボネヴィル,サリー・ホーキンス,マデリン・ハリス,サミュエル・ジョスリン,ジュリー・ウォルターズ,ニコール・キッドマン,ピーター・カバルディ,ティム・ダウニー

 マイケル・ボンドの児童文学〈くまのパディントン〉を原作とする冒険ファンタジィ映画です。ペルーからロンドンにやって来た紳士的な熊パディントンと彼を家族として迎え入れるブラウン一家の心温まる交流が楽しい作品です。原作は自分も幼き日に或る程度は読んでいたのですが,その頃と些かも変わることのないパディントンの魅力が素晴らしい。人間社会の常識に疎い為に数々の騒動を巻き起こしますが,憎めないのはその生真面目な性格があってこそのもの。この差異が非常に楽しいです。パディントンをそれなりに普通に受け入れるロンドンという街の懐の深さも印象的。また,パディントンの故郷ペルーでの開明的な生活も素晴らしく魅力的でありました。ロンドンから来た探検家との交流が熊たちに文化を開かせたというのが面白い。このあたりは裏読みが幾らでも出来るのですが,素直に楽しむのが吉というべきでありましょう。その探検家との出逢いが全ての原点になっているのが楽しいです。物語としても起伏に富んでおり,飽きさせません。悪人にはその報いがきちんと下されますが,下され過ぎることがなかったのも好印象。如何にもイギリス的な毒気もあり,非常に満足することが出来ました。改めて〈くまのパディントン〉を読み返したくなります。

 パディントンの声を演じているのはベン・ウィショー。最近見ることが多い気がします。その可愛らしい仕草がたまらなく素敵。尤も,本来の熊語で喋ると咆哮にしか聞こえないのですけれども。兎にも角にも,その真摯で紳士な態度が何よりも好ましいです。ブラウン一家の中では長女のジュディが大のお気に入り。年頃の女の子らしい態度が実に可愛い。その一方で熊語を習得するという謎の才能も備えています。一番初めにパディントンを受け入れたメアリー役はサリー・ホーキンス。この種の物語では珍しく母親が完璧なお人よしというのは面白いです。夫が受け入れて,妻が反対する図式のほうがよく見る気がするのですよね。尤も,最初は頑なにパディントンを拒絶していたヘンリーも直に家族として迎え入れることになるのですけれども。ロンドン自然史博物館での対決の際のヘンリーは実に格好良かった。メアリーが惚れ直すのも分かる気がします。今作における悪役はそのロンドン自然史博物館の剥製師でありミリセント。演じるのがニコール・キッドマンの所為か,その悪の所業さえも愛おしい。パディントンとの意外な繋がりも楽しませてくれます。ブラウン一家の隣人カリーとの関わりも良かった。カリーがきちんと悪役でなかったことが嬉しいです。原作でもけちで意地悪なだけで決して悪人ではないのですよね。

 期待以上に楽しめた作品でした。と言うよりも,此処まで好みの物語と言うことは嬉しい誤算であります。パディントンやブラウン一家とニコール・キッドマンの対決も見応えがありました。子供向けであることは勿論ですが,大人としても素直に楽しめる作品に仕上がっていたと思います。是非ともこの路線での次回作を期待したいもの。作中で「暗黒の地ペルー」と繰り返されるのは原作通りとは言え少し危険な香りがします。尤も,このあたりも含めて如何にもイギリス的な悪趣味ささえも感じる諧謔精神は自分の好むところであります。非常に満足出来る作品でありました。
posted by 森山樹 at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年01月31日

シーズンズ 2万年の地球旅行

〈2016年映画感想4本目〉
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シーズンズ 2万年の地球旅行
LES SAISONS
2015年 フランス 97分
監督:ジャック・ペラン,ジャック・クルーゾ
配給:ギャガ
声の出演:笑福亭鶴瓶,木村文乃

 2万年前に終わった氷河期から現代に至るまでのヨーロッパの森を中心に描いた動物ドキュメンタリィです。もともと動物好きということで,楽しく鑑賞しましたが,やや散漫な印象は否めなかったのは残念。とは言え,その動物に寄り添う映像美は素直に感服いたします。物語性を中途半端に挟むくらいならば,四季折々の動物たちの姿を見せてくれるだけで良かったのになあと思います。ナレーターとして笑福亭鶴瓶と木村文乃が起用されていますが,木村文乃はともかく笑福亭鶴瓶は普段の口調そのままなので違和感が拭えませんでした。尤も,これは嗜好に因るところが多い筈。その柔らかで親しみのある口調は好ましい部分もあります。低年齢者を対象としている節もあるので理解は出来ます。但し,自分のような人間からすると木村文乃ひとりで通して欲しかったというのは否めません。また,人類史との関わりが後半になって唐突に登場するのはあまり好みではありませんでした。人類と狼の出逢いから犬が誕生したという事実が後半の中心となっているように感じましたが,このあたりが散漫となっている原因のひとつに思えます。起伏に富ます為の工夫と言えなくはないのですけれども,個人的には人類を扱うことの必要性を感じませんでした。素直に動物ドキュメンタリーとして完結させて欲しかったように思います。

 登場する動物はヨーロッパの森に生息する動物が中心。特にトナカイやモウコノウマ,ヨーロッパオオカミ,ヨーロッパオオヤマネコ,ハリネズミといったあたりが印象に残っています。特にヨーロッパオオカミはかなり丁寧に解説がされていました。群れでの狩りの迫力は素晴らしい。まさに動物目線での撮影であったと言えます。ヨーロッパオオヤマネコの凛と美しさはたまらなく格好良かった。ヨーロッパオオカミとは異なり,単独で狩猟をするという違いが興味深い。その対象がシカのような大型草食動物というのも驚きです。尤も,ヨーロッパオオヤマネコ自体が体長1mくらいはある割と大きめの肉食動物なのではありますけれども。モウコノウマはその名の通りにモンゴルの平原に暮らす野生馬なのですが,ヨーロッパにも生息しているのかは不明。繁殖期の格闘場面などは見応えがありました。一方でハリネズミやモモンガ,ヤマネといったあたりの小動物の可愛らしさも素晴らしい。個人的に一番好きなのはキツネの子供たちでありましたけれども。思わず抱きしめたくなる可愛らしさでした。また,森の成り立ちに深く関与する鳥の扱いが結構良かったのも嬉しい。森林から田園への移行の中にも鳥が果たした重要性が触れられていました。

 動物の姿を見ている分は非常に楽しかった。残念なのはやはり後半からの人類の登場でありましょう。妙に説教臭くなった末に人類が野生動物への理解を深めたから冬の時期は終わったというまとめには疑問を抱かざるを得ません。このあたりは率直に言って余計だったと思います。それでも大画面で見る自然の営みはやはり十分に鑑賞する価値はありました。ヨーロッパの森林地帯での動物たちの姿が強く心に残る作品です。最後まで木村文乃の声での解説となっていれば個人的には良かったのになあという印象を抱かざるを得ませんでした。笑福亭鶴瓶が悪いというわけではないのですけれども。
posted by 森山樹 at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)