2016年01月31日

シーズンズ 2万年の地球旅行

〈2016年映画感想4本目〉
シーズンズ.jpg

シーズンズ 2万年の地球旅行
LES SAISONS
2015年 フランス 97分
監督:ジャック・ペラン,ジャック・クルーゾ
配給:ギャガ
声の出演:笑福亭鶴瓶,木村文乃

 2万年前に終わった氷河期から現代に至るまでのヨーロッパの森を中心に描いた動物ドキュメンタリィです。もともと動物好きということで,楽しく鑑賞しましたが,やや散漫な印象は否めなかったのは残念。とは言え,その動物に寄り添う映像美は素直に感服いたします。物語性を中途半端に挟むくらいならば,四季折々の動物たちの姿を見せてくれるだけで良かったのになあと思います。ナレーターとして笑福亭鶴瓶と木村文乃が起用されていますが,木村文乃はともかく笑福亭鶴瓶は普段の口調そのままなので違和感が拭えませんでした。尤も,これは嗜好に因るところが多い筈。その柔らかで親しみのある口調は好ましい部分もあります。低年齢者を対象としている節もあるので理解は出来ます。但し,自分のような人間からすると木村文乃ひとりで通して欲しかったというのは否めません。また,人類史との関わりが後半になって唐突に登場するのはあまり好みではありませんでした。人類と狼の出逢いから犬が誕生したという事実が後半の中心となっているように感じましたが,このあたりが散漫となっている原因のひとつに思えます。起伏に富ます為の工夫と言えなくはないのですけれども,個人的には人類を扱うことの必要性を感じませんでした。素直に動物ドキュメンタリーとして完結させて欲しかったように思います。

 登場する動物はヨーロッパの森に生息する動物が中心。特にトナカイやモウコノウマ,ヨーロッパオオカミ,ヨーロッパオオヤマネコ,ハリネズミといったあたりが印象に残っています。特にヨーロッパオオカミはかなり丁寧に解説がされていました。群れでの狩りの迫力は素晴らしい。まさに動物目線での撮影であったと言えます。ヨーロッパオオヤマネコの凛と美しさはたまらなく格好良かった。ヨーロッパオオカミとは異なり,単独で狩猟をするという違いが興味深い。その対象がシカのような大型草食動物というのも驚きです。尤も,ヨーロッパオオヤマネコ自体が体長1mくらいはある割と大きめの肉食動物なのではありますけれども。モウコノウマはその名の通りにモンゴルの平原に暮らす野生馬なのですが,ヨーロッパにも生息しているのかは不明。繁殖期の格闘場面などは見応えがありました。一方でハリネズミやモモンガ,ヤマネといったあたりの小動物の可愛らしさも素晴らしい。個人的に一番好きなのはキツネの子供たちでありましたけれども。思わず抱きしめたくなる可愛らしさでした。また,森の成り立ちに深く関与する鳥の扱いが結構良かったのも嬉しい。森林から田園への移行の中にも鳥が果たした重要性が触れられていました。

 動物の姿を見ている分は非常に楽しかった。残念なのはやはり後半からの人類の登場でありましょう。妙に説教臭くなった末に人類が野生動物への理解を深めたから冬の時期は終わったというまとめには疑問を抱かざるを得ません。このあたりは率直に言って余計だったと思います。それでも大画面で見る自然の営みはやはり十分に鑑賞する価値はありました。ヨーロッパの森林地帯での動物たちの姿が強く心に残る作品です。最後まで木村文乃の声での解説となっていれば個人的には良かったのになあという印象を抱かざるを得ませんでした。笑福亭鶴瓶が悪いというわけではないのですけれども。
posted by 森山樹 at 20:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年01月26日

白鯨との闘い

〈2016年映画感想3本目〉
白鯨との闘い
IN THE HEART OF THE SEA
2015年 アメリカ 121分
監督:ロン・ハワード
配給:ワーナー・ブラザース
製作:Village Roadshow Pictures
出演:クリス・ヘムズワース,ベンジャミン・ウォーカー,キリアン・マーフィー,トム・ホランド,ブレンダン・グリーンソン,ベン・ウィショー,ミシェル・フェアリー,フランク・ディレイン

 ハーマン・メルヴィルの『白鯨』の創作に隠された物語が描かれる海洋アクション映画です。19世紀アメリカの捕鯨船の描写が実に興味深い。白鯨との闘いと銘打たれてはいますが,実際には白鯨によって難破した後の漂流の方が中心になっていたようにも思います。いずれにせよ,荒々しい太平洋の試練が凄まじい作品でありました。白鯨との遭遇から難破,そして救助に至るまでの過酷な漂流と後半の怒濤の展開には息を呑むばかり。大自然の圧倒的な膂力の前には人間という種が小さな存在であるということを思い知らされます。と言っても,その知恵と勇気で強大な自然に立ち向かう人間の誇りと欲望もまた痛感するところではありますけれども。特に凡そ3か月にも及ぶ過酷な漂流生活が非常に印象的。語り手であるトマス・ニッカーソンが隠し続け,それ故に良心の呵責に苛まされ続けていた真実は衝撃的ではありますが,生き延びる為には仕方のない措置だったと割り切るしかないのでありましょう。寧ろ,この真相を明らかにしたことで,憑き物が落ちたかのような,老いたトマス・ニッカーソンの表情が印象に残りました。ひとりで秘密を抱え込むということの孤独な苦しさを想います。決して爽快感を得られる作品ではありませんが,存外に後味が良いのが嬉しい。海洋冒険アクションとしても十分に楽しめます。

 物語の舞台となる捕鯨船エセックス号の一等航海士オーウェン・チェイスを演じるのはクリス・ヘムズワース。その精悍な表情は海の男というのに相応しい。歴戦の船乗りらしく勇敢で,それでていて冷静な振る舞いが格好いいです。一方で家柄だけで船長の座に就いたジョージ・ポラード・Jr役はベンジャミン・ウォーカー。彼とオーウェンとの対立がエセックス号を有らぬ方向へと導いていきます。とは言え,最後は男としての面目を果たしたのは嬉しい。きちんと見せ場が用意されていました。尤も,彼が自分の経験不足を認め,要所をオーウェンに任せていれば,此処までの事態にならなかった気はします。但し,金と名誉というふたつの欲に支配されていたオーウェンにも相応の責任はありましょうけれども。このふたりが最良の関係を当初から見せていればとも思いますが,それは言っても詮無きことでしょう。オーウェンの親友であり,同じく歴戦の船乗りであるマシュー・ジョイ役はキリアン・マーフィー。意外にいい役回りだったなあと思います。あの状態で生き延びるのがまさに歴戦の強者といったところでありましょう。トマス・ニッカーソンからエセックス号の悲劇を聴きだすハーマン・メルヴィル役はベン・ウィショー。功名心に駆られる駆け出しの作家という雰囲気が素敵。エセックス号の真実を知る為に全財産を差し出すというのは或る種理解出来なくもないのが救い難い。このあたりは思わず同調してしまいます。それだけ秘密というものは甘美な誘いであります。

 その名の通りの白鯨との闘いを期待すると当てが外れるかもしれませんが,海洋冒険アクションとして十分に楽しめる作品です。特に19世紀の捕鯨船での生活が描かれるのは歴史趣味者としても興味深いところ。また,大自然の象徴としての意味合いも持つ巨大な白鯨の迫力も圧倒的で素晴らしい。白いマッコウクジラということでの神性さえも帯びている気がします。漂流生活は目を覆いたくなるような悲惨さもありますが,それを含めて自然に立ち向かい敗れた人間たちが,それでも生き延びる為に尽くした最善の策に胸を打たれて止みません。生き延びたということは或いは大自然に打ち勝ったということも言えるのはないでしょうか。いずれにせよ,余韻の残る結末が印象的な作品でありました。満足です。
posted by 森山樹 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年01月24日

モンスターズ/新種襲来

〈2016年映画感想2本目〉
モンスターズ新種襲来.jpg

モンスターズ/新種襲来
MONSTERS: DARK CONTINENT
2014年 アメリカ 119分
監督:トム・グリーン
配給:クロック・ワークス
製作:Vertigo Films
出演:ジョニー・ハリス,サム・キーリー,ジョー・デンプシー,カイル・ソーラー,ニコラス・ピノック,パーカー・ソーヤーズ,ソフィア・ブテラ

 宇宙から飛来した地球外生命体が定着した世界を描くSFアクション映画です。『モンスターズ/地球外生命体』の続篇に当たりますが,世界設定以外は特に継承された部分はありません。前作が非常に面白かったので,今作もかなり期待していたのですが,当てが外れたという印象はどうしても拭えませんでした。とにかく題名に反して,というべきか,地球外生命体たちが物語の本筋に絡んでこないというのですから,どうしようもありません。中東を舞台に終始米軍と現地の武装組織との苛烈な戦いが描かれるだけに留まってしまいました。それも爽快感の欠片も得られない悲惨な戦いというのは辛かった。仲間たちがほぼ全滅し,生き残った上官が次第に狂気に陥っていく中での酸鼻を極めた逃走劇など望んではいません。このあたりは製作側がこの作品に何を意図したのか分かりかねます。尤も,地球外生命体が生命として定着した地球の姿は面白かった。物語にはまるで関わらないものの地球外生命体の生態などが或る程度描かれたのは収穫と言えるでしょうか。中東の砂漠を群れを成して走る地球外生命体の姿が印象的でした。こんな物語なら地球外生命体の生態だけを映し出した方が良かったくらいです。人間に対して地球外生命体が無為に好戦的でなかったことも印象的でありました。其方の方が本来自然に思えます。

 登場人物はそれなりに多いもののほぼ全員が米軍の兵士ということで見分けがつかないのが難点。尤も,物語が中盤に差し掛かる前にふたりを残して一掃されるので特に問題はありません。地球外生命体よりも戦場の中で狂っていく人間の姿の方に恐怖を感じるというのは有り勝ち過ぎてあまり面白味を感じませんでした。そして,その狂い方が徐々に進んでいくというのは現実感があり過ぎて,嫌悪感を抱きます。それが製作側の意図したことなのでしょうけれども,全く爽快感がなく,希望も与えられないのは鑑賞していて辛いものがありました。唯一の見どころは主人公たちを救った現地住民たちの中にソフィア・ブテラがいたこと。その美貌はやはり魅力的であります。と言っても,それ程出番が多くないのは残念。但し,夜に主人公とともに雷鳴の中で胞子を飛ばす地球外生命体の姿を目撃する場面は印象的でありました。あの美しさは筆舌に尽くし難いものがあります。全般的に地球外生命体の関わる場面は概ね満足が出来ました。残念なのは人間側の物語の尺が多過ぎたということに尽きます。それくらいなら,陳腐であっても地球外生命体との戦いを描いてくれた方が余程に楽しめた筈です。或いはこのような世界的な危機に際しても人間同士の戦いを止めないことへの皮肉と絶望が主題であったのかもしれませんけれども。いずれにしても爽快感は全くありませんでした。

 事前の期待が大きかっただけに,却って落胆してしまいました。個人的にはもう少し娯楽性を追求して欲しかった。〈モンスターズ〉の名を冠している分,余計に期待し過ぎた点はあるにしても,不満が大きな作品でした。丁寧に物語を描こうとして冗長さを醸し出しているのも残念。序盤の従軍前の描写が殆ど物語には活かされていませんでしたからね。様々な意味で残念に過ぎる作品になってしまいましたが,それでも地球外生命体の描写が興味深かったのは救いであります。実際に地球外生命体が飛来して定着した場合の或る種の思考実験的な作品として楽しむのが吉かもしれません。
posted by 森山樹 at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2016年01月18日

2015年傾向分析

1位 ワーナー(7本)
1位 20世紀フォックス(7本)
3位 ディズニー(6本)
4位 松竹(5本)
4位 東映(5本)
4位 東宝(5本)
7位 ライオンズゲート(4本)
8位 ユニバーサル(3本)
8位 コロンビア(3本)
8位 パラマウント(3本)

 2015年に鑑賞した映画を配給会社別に統計を取ってみました。多少の誤差はある筈。

 20世紀フォックスとワーナーが同点で1位。まあ,このあたりは予想通り。ワーナーの方が多い印象はありましたけれどね。次いでディズニーというのも意外性に欠けます。前評判は高いけれど,鑑賞すると存外面白さを感じない作品が多い気もしますけれども。4位を松竹,東映,東宝が仲良く分けあっているのが面白い。とは言え,東映は特撮ばかりだし,松竹は〈機動戦士ガンダムTHE ORIGIN〉を含んでいるので,事実上は東宝ということになるのかもしれません。ライオンズゲートは自分好みの映画が多いので,もう少し上に行くかと思っていました。コロンビアとパラマウント,ユニバーサルも同点。鑑賞数の少ない方がより下というのはちょっと意外な気もします。

 この種の統計で自己分析をするのは結構楽しい。余力があれば,毎年の恒例としたいところです。
posted by 森山樹 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑文

2016年01月17日

イット・フォローズ

〈2016年映画感想1本目〉
イット・フォローズ.jpg

イット・フォローズ
IT FOLLOWS
2014年 アメリカ 100分
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
配給:ポニーキャニオン
製作:Northern Lights Films
出演:マイカ・モンロー,キーア・ギルクリスト,ダニエル・ゾヴァット,ジェイク・ウィアリー,オリヴィア・ルッカルディ,リリー・セーペ

 恋人との性交渉が原因で他者には見ることが出来ない異形に追跡されてしまう少女の恐怖を描いた青春ホラー映画です。ホラー映画の常として厳格な法則が規定されているのですが,性交渉によって伝染するというのが興味深い。異形は歩くことしか出来ず,自動車等を用いれば,或る程度の時間を稼ぐことが出来るということも明言されています。また,他者の視覚に捉えられることは出来ずとも,例えば布を被せることによって,存在が認識出来るというのも面白い。即ち,実体はあるということになります。この異形の正体は結局謎のまま。他者と性交渉をすることで移す解決方法が提示されないのが怖い。また,少女に齎された終わりのない恐怖を如何に打破するのか,少女の友人たちが協力する青春劇としての側面も備えています。面白いのは両親を含めて大人の介入が全くないこと。その存在も極めて希薄なものとなっています。性交渉が大きな要素となっていることからも,子供と大人との過渡期である揺れ動き易い年代の不安感がこの恐怖の源ということなのかもしれません。だからこそ,同じ年代の少年少女のみが物語の中心に位置しているように思います。それは様々な姿を見せる異形が共通して全裸或いは半裸の性的な印象の強い姿で現れることからも言えるでしょう。そして,それらの姿が常に中年以上の或る意味で醜い姿であるように描写されていることからも大人となることへの憧憬と本質的な不安感が表されているように思うのです。

 主人公のジェイ役はマイカ・モンロー。その美しさは特筆もの。如何にもアメリカの若者といった感じの行動は正直理解出来かねる部分もありますが,その魅力だけは十分に伝わります。傍目から見ると軽率に思える行為も多いけれど,実際に自分が恐怖を体験した時に理性的な行動を取れるという自信はありません。そのジェイに想いを寄せる幼馴染のポール役はキーア・ギルクリスト。如何にも冴えない風体の若者ですが,終盤ではジェイを恐怖から救う為に大活躍を見せてくれます。序盤からジェイが水着になる場面が多かったのは伏線と言っていいのかしら。ポールと共にジェイを救うべく尽力するヤラ役のオリヴィア・ルッカルディとケリー役のリリー・セーペも魅力的。ジェイの悪口を言うこともありますが,最後まで逃げ出すことなく彼女の為に戦ったふたりの友情が熱いです。特にケリーはお気に入り。また,ヤラが持つ貝殻型の電子書籍媒体が妙に存在感がありました。特に物語で大きな役割を果たすわけではないのですけれども。最近の映画にしては珍しく携帯電話やスマートフォンの描写が希薄なことで時代感が不明瞭になっているのも面白い。このヤラの電子書籍媒体の存在から近未来のようにも思えるのですが,それ以外は郷愁感さえ漂っています。其処に却って普遍性を生み出しているようにも思います。

 期待以上に楽しめた作品でありました。恐怖という点ではやや物足りないものもありましたが,異形に後を追われ続けるというのはやはり怖い。異形の姿自体は恐怖よりも生理的嫌悪感が先に立つように思います。そして,何よりも,友人の見舞われた超自然の体験を打開しようと尽力する友人たちの姿が頼もしい。ポール以外は其処までジェイの身を案じているようにも思えなかったのですけれどね。言葉よりもその行為が友情の証であると言えましょう。自分にも確かに有った子供と大人との過渡期を思い出さずにはいられない,そんな作品でありました。非常に満足です。
posted by 森山樹 at 14:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)