2015年11月30日

機動戦士ガンダムTHE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア

〈2015年映画感想55本目〉
機動戦士ガンダムTHE ORIGIN II.jpg

機動戦士ガンダムTHE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア
2015年 日本 58分
監督:今西隆志
配給:松竹
声の出演:池田秀一,潘めぐみ,浦山迅,銀河万丈,三宅健太,渡辺明乃,喜山茂雄,沢城みゆき,茶風林,恒松あゆみ,藤村歩,古谷徹,関俊彦

 『青い瞳のキャスバル』に続く〈機動戦士ガンダムTHE ORIGIN〉の第二作目です。故郷であるムンゾ共和国を追われ,地球に逃亡したキャスバルとアルテイシアの苦難の旅路が描かれます。また,中盤からはドズル・ザビに請われたランバ・ラルが後の黒い三連星とともにモビルスーツ開発に尽力するなど,まさに〈機動戦士ガンダム〉の前日譚としての色合いが濃くなっていくのが面白い。後にキャスバルにとっては不倶戴天の敵となるアムロ・レイや或いはミライ・ヤシマといったホワイトベースの乗員たちの幼き日の姿が登場するのもやはり楽しいです。特にミライの父であるシュウ・ヤシマは間接的にキャスバルがシャア・アズナブルを名乗るようになった契機を作った人物と言えるのが面白い。運命の糸が様々な形で絡んで,歴史という一枚の織物を編んでいく様子を堪能出来ます。今回はザビ家とキャスバルたちの直接的な対峙はなかったので,ギレン・ザビやキシリア・ザビの出番が少なかったのは残念。特に今作のキシリアの凶悪な美貌はかなり好みなので今後の活躍を期待したいものであります。物語として大きかったのは母アストライアの死でありましょう。彼女の死が全ての始まりだったようにさえ感じてしまいます。何よりもキャスバルとアルテイシアの離別もこの出来事が契機でありました。彼女を最後まで見守ったのがクラウレ・ハモンというのが印象的。本当に運命を感じてしまいます。

 前回では田中真弓だったキャスバルの声は今回から池田秀一に変わりました。少年を演じるには無理があるのではないかと思っていたけれど,想像以上に違和感がなかったのが素晴らしい。尤も,古谷徹が演じるアムロ・レイは全く違和感どころか年齢相応の声にしか聞こえませんでした。声優の凄さを実感します。注目していたのは本物のシャア・アズナブルの声を誰が演じるのかということですが,結果的には関俊彦ということで大満足。意外な程にキャスバルと声の感じが似ていたのが面白かったです。アルテイシアの声は引き続き潘めぐみが演じます。そして,やはり本作のもうひとりの主人公というべきランバ・ラルの魅力が素晴らしい。父の政敵であったザビ家のドズル・ザビとの緊張感あるやり取りがたまりません。勿論,クラウレ・ハモンとの絡みもね。キャスバルやアルテイシアが子供の理屈で動かざるを得ない本作だけにランバ・ラルとクラウレ・ハモンが大人としての格好良さを担当しているように思います。また,キャスバルとアルテイシアを引き取り,我が子のように育てるテアボロ・マスの姿も印象的でした。此方はザビ家に対する怨念により妄執の塊となったジンバ・ラルとの対比でありましょうか。キャスバルはともかくアルテイシアがきちんと育ったのはテアボロ・マスの尽力に因るものが大きいように思いました。尤も,それは結果的には幸せには繋がらないのでしょうけれども。

 相変わらず,MS戦がなくとも,きちんと〈機動戦士ガンダム〉として成立しているのが素晴らしい。キャスバルとシャアの邂逅が如何なる方向へ進むのか楽しみです。そして,キャスバルがいつシャア・アズナブルを名乗るように名乗るのかも。次回予告を見る限りではいよいよ士官学校でのガルマ・ザビとの出逢いも描かれる模様。両親の仇であるザビ家の一員にして親友ともなるガルマ・ザビとの関係が如何なる形に物語られるのでありましょうか。そして,勿論ランバ・ラルによるモビルスーツ開発の行方も楽しみ。一年戦争前夜を掘り下げることがこんなに面白いとは思いもよりませんでした。次なる第三話『暁の蜂起』を心待ちにしたいと思います。
posted by 森山樹 at 22:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年11月29日

ヴェルサイユの宮廷庭師

〈2015年映画感想54本目〉
ヴェルサイユの宮廷庭師.jpg

ヴェルサイユの宮廷庭師
A LITTLE CHAOS
2015年 イギリス 117分
監督:アラン・リックマン
配給:KADOKAWA
出演:ケイト・ウィンスレット,マティアス・スーナールツ,スタンリー・トゥッチ,ヘレン・マックロリー,スティーヴン・ウォディントン,ジェニファー・イーリー,アラン・リックマン

 ヴェルサイユ宮殿の庭園建造に秘められた物語を描いた歴史恋愛映画です。ヴェルサイユ宮殿の庭園のひとつ〈舞踏の間〉の建造を主軸に庭園建築家と造園家の寡婦との恋愛が物語られます。何はともあれ,華麗なヴェルサイユ宮殿を中心としたフランス王家の宮廷劇が興味深い。巧みに史実を織り込んであるのが好みであります。特にマントノン侯爵夫人との秘密結婚の陰に主人公サビーヌの提言があったというのが面白い。梨を好んだという逸話も盛り込まれていました。監督であるアラン・リックマンがルイ14世を演じることもあって,その描写には特に力が入っていたように思います。尤も,この時代を描くならばルイ14世こそが主人公であることは当然なのですけれどね。オルレアン公フィリップ1世を中心に,他にもヴェルサイユ宮廷の要人は何人も登場しますが,ルイ14世とは貫録が違いました。とは言え,やはりサビーヌの魅力は格別なものがあります。このサビーヌと妻であるマリー・テレーズ・ドートリッシュを喪ったルイ14世との庭園での語らいが大変魅力的。そのサビーヌは不幸な事故によって夫と娘を失った過去があり,それが心の傷となっています。愛のない不幸な結婚を強いられるル・ノートルとの敬意を含んだ愛情が徐々に育まれていくのは美しいものがありました。ヴェルサイユ宮殿の庭園〈舞踏の間〉を完成させるに至る苦難とふたりが結ばれるまでの過程が重なり合っていたのが楽しかったです。

 主人公サビーヌ・ド・バラを演じるのはケイト・ウィンスレット。その芯の強い,けれども影を帯びた表情が大変に印象的。如何なる苦難にも負けずに〈舞踏の間〉の造営に尽力するのは或る意味で娘を喪った心傷から逃れる為だったのかもしれません。原題にある“ほんのわずかな無秩序”を好む彼女の造園法は面白かった。とは言え,それ自体は物語の中ではあまり描かれなかったように感じるのは残念でした。そのサビーヌを見出した実在の造園建築家アンドレ・ル・ノートル役はマティアス・スーナールツ。最初は反発していたサビーヌと心を通わせる展開は王道ですが,やはり美しい。自分とは異なる発想の持ち主であるサビーヌを認める度量の広さも魅力的であります。愛のない妻との関係や造園建造の遅れによるルイ14世からの圧力などに苦悩する苦労性の姿も結構好き。そして,やはりルイ14世を演じるアラン・リックマンが素敵過ぎます。その傲慢で勤勉で王者としての威厳を存分に見せつける圧倒的な存在感がたまりません。優しさと恐ろしさを兼ね備えた,それはまさに印象通りのルイ14世でありました。また,個人的にはアンドレ・ル・ノートルの友人で,サビーヌの造園に協力するティエリー・デュラスのいい人ぶりが心に残っています。彼のような存在いるからこそ,苦難の果てに〈舞踏の間〉の完成に至ったのでありましょう。完成を祝しての庭園舞踏会が素敵でありました。

 改めてこの種の歴史を題材とした作品が好きなのだなあということを実感した映画でありました。史実そのものではなく,そこに創作を付加する形が大変好みなのですよね。ところでフランスを舞台とする映画なのに製作がイギリスというのも興味深いところ。如何にも英国製の映画らしい落ち着きに満ちた美しい物語でありました。いつの日か,この映画のことを思いだしながら,ヴェルサイユ宮殿を訪れてみたいものであります。或る意味で自分の求めているもの全てが扱われている映画のように思いました。大変満足です。
posted by 森山樹 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年11月25日

メイズ・ランナー2/砂漠の迷宮

〈2015年映画感想53本目〉
メイズ・ランナー2.jpg

メイズ・ランナー2/砂漠の迷宮
MAZE RUNNER: THE SCORCH TRIALS
2015年 アメリカ 129分
監督:ウェス・ボール
配給:20世紀フォックス
出演:ディラン・オブライエン,カヤ・スコデラーリオ,トーマス・ブローディ・サングスター,キー・ホン・リー,パトリシア・クラークソン,ローサ・サラザール,ジェイコブ・ロフランド,ナタリー・エマニュエル

 『メイズ・ランナー』の続篇,というか三部作の第二章にあたる作品です。迷宮から外の世界に脱出したトーマスたちの新たな冒険が描かれます。漸くの思いで抜け出した外の世界は荒廃し,滅亡に向かう世界だったというのはあまりにも皮肉。制限はあったにせよ,寧ろ迷宮の方が楽園だったようにさえ感じてしまいます。尤も,その楽園は外の世界が直面する危機を打開する為に作られた単なる実験場に過ぎなかったわけですけれども。結局,外の世界の危機というのは明言はされなかったのが不満。その惨状は戦禍を感じさせますが,単純に戦争によって此処まで荒廃するものなのかは分かりません。そもそも,ゾンビが蔓延るというのも戦争に因るものだけではないと感じさせます。このあたりはきちんと最終章で描かれるのでしょうか。また,トーマスたちを迷宮に放り込み実験を行っていたWCKDに対抗する複数の組織が登場するも事態を混沌とさせています。廃屋に立てこもっていたホルヘとブレンダのふたりに,ヴィンスに率いられるライト・アーム,そしてWCKDとそこから逃亡を図ったトーマスたちと現在は4つの陣営に分かれる感じかなあ。尤も,ホルヘとブレンダ,ライト・アーム,トーマスたちはWCKDに反するという統一の目的を有するわけで,今後はWCKDを相手にしての共同戦線が中心となりそうであります。問題は反WCKDという目的はあっても,それ以外の目算がまるでないということでありますけれども。このあたりはもう少し説得力のある目的が欲しいところであります。単に逃げているだけに思えないのですよね。まあ,それも十分な理由ではありますが。

 主人公は変わらずディラン・オブライエンが演じるトーマスとカヤ・スコデラーリオが演じるテレサのふたり。このふたりの意識の違いが物語の中で重要な要素となっています。あの結末も或る程度予想は出来たものの此処まではっきりと別の道を歩むとは思っていませんでした。この訣別が如何なる帰結を迎えるのか楽しみです。前作からはニュートとミンホ,フライパン,ウィンストンが続投。新たに別の迷宮で実験台とされていたエリスが仲間に加わります。また,WCKDとは異なる立ち位置で廃屋に立てこもっていたホルヘとブレンダもかなり存在感がありました。特にブレンダは事実上中盤ではテレサと並ぶヒロイン役を担います。彼女が探し求める兄は次回作で登場することになるのかな。また,ヴィンス率いるライト・アームではかつてエリスと同じ迷宮にいたふたりの少女が属していますが,そのうちのひとりのであるハリエットをナタリー・エマニュエルが演じているというのが面白い。割と出番も多かったので,最終章では更なる活躍が期待出来そうです。銃撃を行う少女は何故か魅力を感じてしまうのですよね。敵対するWCKDではジャンソン役のエイダン・ギレンの悪辣さが印象的。パトリシア・クラークソンが演じるエヴァ博士とともに悪役ぶりを見せつけてくれます。結局,彼とは決着がつかなかったので,次回作でもトーマスたちの前に立ちはだかるのでありましょう。エヴァ博士の胡乱さも割と好みではあります。その非道な行為があくまでも人類を救う為というのが悲しいです。

 既に〈メイズ・ランナー〉という名称が意味を失っている感はありますが,終末世界を舞台としたゾンビ映画としての趣は十分に堪能しました。割と高性能な活動性を有したゾンビはかなり脅威。噛まれると伝染するというのも王道ではあります。問題は彼らの発生原因とその打開策を見出せるのかということ。此処までのところは打つ手がない絶望的な状況と言えます。更に人間同士での内紛も苛烈化しているわけですしね。最終章となる次回作で如何なる物語が織られるのか楽しみにしたいと思います。トーマスたちと訣別したテレサの裏切りにWCKDに捕らわれたミンホと気になる要素も満載です。なお,次回作の公開は2017年とのこと。少し間が空くのが残念です。出来れば,来年くらいに公開して欲しかったなあ。
posted by 森山樹 at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年11月20日

トランスポーター イグニッション

〈2015年映画感想52本目〉
トランスポーターイグニション.jpg

トランスポーター イグニッション
TRANSPORTER REFUELED
2015年 フランス 96分
監督:カミーユ・ドゥラマーレ
配給:アスミック・エース
出演:エド・スクレイン,レイ・スティーヴンソン,ロアン・シャバノル,ガブリエラ・ライト,タチアナ・パジコヴィク,ウェンシャ・ユー,ラシャ・ブコビッチ,レン・クダジャビスキ,ノエミ・ルノワール

 リュック・ベッソン監督による〈トランスポーター〉シリーズのリブート作品です。今作ではリュック・ベッソンは製作・脚本を担当し,新たにカミーユ・ドゥラマーレが監督を務めています。また,旧三部作では主演を務めたジェイソン・ステイサムに代わって,主人公フランク・マーティンはエド・スクレインが演じることとなりました。いろいろな意味で新たな〈トランスポーター〉の再始動を告げる作品となっています。と言っても,基本的な設定はほぼ同一。フランスを舞台に優秀な運び屋が巻き込まれる騒乱が描かれます。対するは街を支配する強大なマフィア。そのマフィアの手中から逃げ出し,復讐を企てる美女たちの戦いが興味深い。また,かつて諜報員として活躍していたフランクの父の活躍も目立ちます。と言うよりも,一時は寧ろフランク・シニアのほうが主役を食っていたような気がするくらい。その立ち位置の格好良さは心惹かれるものがありました。勿論,フランクとの親子としての情愛も見所のひとつ。まあ,愛する息子を前にして,美人局に逢うというのもどうかとは思うのですけれど。残念だったのは,運び屋としての活躍が描かれるのが中盤までということかなあ。後半はマフィアとの船上での直接対決ということになってしまいます。これはこれで悪くないのですけれども,個人的にはやはり運び屋であるが故の戦いを見せて欲しかった。なお,序盤の運び屋としての活躍は結構楽しかったです。中盤以降も普通のアクション映画として見る分には割と面白かったけれどね。

 主人公フランク・マーティン役のエド・スクレインは結構格好良かった。瀟洒なスーツを身に纏い冷静な態度の一方で荒々しい熱さも兼ね備えています。結果的には女性に甘いのも好印象。父であるフランク・シニアとの絶妙な距離感も素晴らしいものがありました。その父であるフランク・シニアを演じるレイ・スティーヴンソンは更に格好良いというのが素敵。美女に騙されて毒を投与されるなど抜けた面も見せますが,元諜報員として決めるところは決める伊達男ぶりを如何なく発揮してくれます。何度も窮地に立たされながらもその経験で結果的に物事を丸く収めてしまうのがたまりません。対するロシア人マフィアのカラゾフ役はラシャ・ブコビッチ。此方は悪辣ではありますが,単純に悪役ということでそれ程の印象はなし。寧ろ,彼に付き従う情婦のマイサのほうが目立っていました。ノエミ・ルノワールはやっぱり美人ですねえ。フランクの依頼人であるアンナを演じるのはロアン・シャバノル。そして,彼女の仲間である3人の美女はガブリエラ・ライト,タチアナ・パジコヴィク,ウェンシャ・ユーがそれぞれ演じます。このあたりは出番も多くて,見せ場も結構ありました。特にみんなで金髪美女の変装する場面が多かったのは楽しかったです。みな不遇な立場にあり,それぞれに苛烈な結末を辿るのですが,一応は溜飲を下げる展開となっているのは好みでありました。

 〈トランスポーター〉の新たなる開幕を切るに相応しい作品でありました。個人的にはやはり運び屋としての側面がもう少し色濃い方が好みではありますが,以前よりも更に過激さを増したアクションも悪くありません。フランクと父との絶妙なコンビ関係も秀逸。悪党には悪党の報いが下る展開も王道ながら,王道だからこその楽しさを味あわせてくれます。後はもう少し敵役に魅力があると嬉しいのですけれども。今後の更なるシリーズ展開を期待させる作品です。十分に満足。
posted by 森山樹 at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年11月18日

サバイバー

〈2015年映画感想51本目〉
サバイバー.jpg

サバイバー
SURVIVOR
2015年 アメリカ/イギリス 97分
監督:ジェームズ・マクティーグ
配給:ライオンズゲート/ショウゲート
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ,ピアース・ブロスナン,ディラン・マクダーモット,アンジェラ・バセット,ロバート・フォスター,ジェームズ・ダーシー,フランシス・デ・ラ・トゥーア

 冤罪を着せられた女性の逃避行と反撃を描くアクション・サスペンス映画です。ロンドンとニューヨーク,ふたつの大都市を舞台とする華麗で危険な戦いが面白い。とはいうものの,ふたつの都市を舞台とする必然性がそれ程高いわけではないので,妙に冗長なものを感じました。楽しいは楽しいのですけれども,舞台はどちらかに絞った方が良かったように思います。それぞれの都市の雰囲気に合わせた物語構成は興味深かっただけに,不自然な展開がちょっと残念に思えました。主人公である女性外交官の才覚が高いのは十分に理解出来るのですけれども,戦闘能力が存外に高かったのも気になります。このあたりの明確な説明は劇中ではされなかった筈。まあ,演じているのがミラ・ジョヴォヴィッチということで違和感なく理解出来てしまう気もするのですけれども。それにしても,結果的には伝説のテロリストをひとりで撃破してしまうわけで,このあたりの論理的な説明は欲しかったように思います。単純に実は諜報員だった,というだけでも説得力が全然違うと思うのですよね。また,舞台がロンドンからニューヨークへと移行することでロンドン篇での登場人物が物語の終盤では殆ど絡まなくなったのも寂しい。イギリス警察の敏腕警部あたりは結構魅力的だったのですけれどね。結果的に物語から途中で姿を消す羽目になってしまいました。あくまでも女性外交官とテロリストの戦いだけを描きたかったということなのかもしれませんが,その存在感は勿体無かったように思います。

 主人公のケイト・アボット役は前述のとおりミラ・ジョヴォヴィッチ。その精悍な格好良さは素晴らしい。その明敏な頭脳でテロリストの企てに逸早く気付くのですが,それが故に却ってテロリストに狙われることになるのが不運過ぎます。とは言え,理解のある直属の上司の助力と結構な幸運も交えて逃避行を続けながらも反撃に出るというのが素敵。特にニューヨークではテロリストの計画を見抜いた上で阻止に成功するという完全に勝利を収めます。テロリストの計画が成功していたら被害者は100万人という大惨事になっていただけに彼女の功績は計り知れません。そのケイトを執念深く付け狙う伝説のテロリスト,通称時計屋を演じるのはピアース・ブロスナン。その不気味な存在感が素晴らしい。但し,圧倒的に能力は高い筈なのに何度もケイトの殺害に失敗してしまうが故にやや当てが外れた印象は否めません。とは言え,それ以外では自らの目的を完遂し,また仲間であっても障害になると判断すれば容赦なく消す非道ぶりは或る意味で格好良かった。最後は割と呆気なかったけれど,仕方がないのかなあ。他にもケイトを追うイギリス警察のアンダーソン警部やケイトを支援するサリー,それにケイトの直属の上司であるサムと脇役陣の働きぶりも印象に残りました。特にアンダーソン警部役のジェームズ・ダーシーは如何にも有能な英国の警察官といった感じがたまらなく素敵です。

 とりあえずは楽しかったのですが,ロンドン篇に比べて,終盤のニューヨーク篇の展開が雑に過ぎたのは残念でした。アメリカ同時多発テロで友人を失ったケイトの戦いを描きたかったのだろうけれども,ニューヨークが舞台となるのはやや唐突に過ぎた気がします。ニューヨークでのテロリストとの遭遇や彼らと対峙する高層ビルへの潜入もかなり適当なもの。ロンドン篇が実に丁寧に描かれて楽しかっただけにその落差の激しさが余計に不満を感じてしまいます。題材的にも好物なのですが,それ故に釈然としない想いが残る作品となってしまいました。ミラ・ジョヴォヴィッチとピアース・ブロスナンの格好良さを堪能出来たことは救いでありましょうか。いろいろな意味で惜しいものを感じました。
posted by 森山樹 at 22:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)