2015年08月29日

メイズ・ランナー

〈2015年映画感想27本目〉
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メイズ・ランナー
THE MAZE RUNNER
2014年 アメリカ 113分
監督:ウェス・ボール
配給:20世紀フォックス
出演:ディラン・オブライエン,ウィル・ポールター,カヤ・スコデラーリオ,トーマス・ブローディ・サングスター,パトリシア・クラークソン,アムル・アミーン,キー・ホン・リー,ブレイク・クーパー

 三部作で描かれるSFアクション・スリラー映画の第1作目です。導入篇にあたる作品ということになりますが,本作でも物語としては一応の決着がついているのは嬉しい。とは言え,やはり三部作を通してみることが前提の作品でありましょう。記憶を失った少年たちが閉鎖空間からの脱出を試みるというのは最近よく見る設定ではあります。不定期に外の世界から送り込まれる物資を頼りに共同体を作り上げる少年たちの姿は或る意味で非常に楽しそう。しかし,その閉鎖空間は毎晩構造が変わる迷宮に取り囲まれており,更にはその迷宮には化物が徘徊していることもあり,脱出は困難を極めます。少年たちの中には脱出を諦め,居心地の良い共同体を維持することを優先する者もいる為に決して一枚岩とは言えない状況にあります。この共同体に脱出のみを目的とする少年が送られてきたことから自体は急変します。自由を目指す変革者と楽園の維持を目指す保守者との対立が単なる閉鎖空間からの脱出という物語を面白くしているのは嬉しい。どちらにも相応の理があるのは確かなのでいろいろと考えさせられます。

 主人公トーマスを演じるのはディラン・オブライエン。物語の鍵を握る人物ということになるのでしょうが,その全ては未だに明かされず。もともとは科学者ということでいいのかな。何故,少年の姿をしているのかは今後明らかになるのでしょうか。いずれにせよ,彼が閉鎖空間に投げ込まれることで世界は変わり始めました。そのトーマスと終始対立するのがウィル・ポールターの演じるギャリー。自由を求めて変革を齎すトーマスに対して,安寧を求める保守的な存在の代表格として描かれています。物語の展開上,悪く描かれてしまうのは仕方がないところなのかな。結局はその保守性にしがみ付くことよりも,トーマスへの反感を形とする方を選んでしまったのが,あのような結末に繋がったのでありましょう。気の毒な存在であるのも事実です。そして,トーマスとともに共同体の崩壊へと繋がった異分子のひとりが唯一の女性であるテレサ。閉鎖空間への最後の来訪者であることが明示されたことで物語は大きな転換を迎えました。彼女もトーマス同様に研究者の一員ということになりそうです。とすると,残りの少年たちのにも正体があるのか気になるところ。このあたりは第二作目以降ということになるのでしょう。

 迷宮を無事に脱出したトーマスたちが目にしたのは崩壊し,滅びへと向かう世界の姿でありました。あの閉鎖空間は滅びを阻止するための実験場であり,他にも幾つもの実験場があることが既に示唆されています。迷宮を無事に脱出できた彼らは第二作目では他の実験場から逃れることに成功した少年たちと再び新たな実験を余儀なくさせられる模様。新たな人物の登場に期待しながら,この滅びに向かう世界の謎の一端が明かされることを期待します。
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2015年08月25日

チャッピー

〈2015年映画感想26本目〉
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チャッピー
CHAPPIE
2015年 アメリカ 120分
監督:ニール・ブロムカンプ
配給:コロンビア映画/ソニー・ピクチャーズ
出演:シャールト・コプリー,デーヴ・パテール,ニンジャ(DIE ANTWOORD),ヨ=ランディ・ヴィッサー(DIE ANTWOORD),ヒュー・ジャックマン,シガニー・ウィーバー

 『第9地区』『エリジウム』に続くニール・ブロムカンプ監督によるSF映画。自我に目覚めたアンドロイドを巡る物語が描かれます。舞台は勿論ヨハネスブルク。犯罪を減らす為に人工知能を搭載した戦闘用アンドロイドが導入された南アフリカでのギャングとチャッピーと名付けられたアンドロイドの交流が楽しい。その交流はあくまでもチャッピーを犯罪に利用する為の教育といった側面が強かったのですが,徐々に子供を育てる親としての意識をギャングたちが持ち始めるのが面白い。後半は自らの開発した戦闘用ロボットを南アフリカ政府に売り込むべく陰謀を巡らせる技術者ヴィンセント・ムーアとの戦いが中心になりますが,その最終的な顛末も意外性があるものでした。この終わり方は想像していなかった。善悪が入り混じる人間社会をアンドロイドの視点で追体験させ,命や心の真の意味を問い掛ける優れた問題提起が為される作品に仕上がっています。勿論,説教臭さは微塵もなく,寧ろ娯楽映画に徹した物語となっているのも嬉しい。前作『エリジウム』ではあまり発揮されなかったニール・ブロムカンプ監督の手腕が存分に生かされています。

 チャッピーの声と動きを担当するのはニール・ブロムカンプ作品では常連のシャールト・コプリー。その大袈裟な演技がアンドロイドらしくて楽しい。そのチャッピーを犯罪用として攫ったギャングのニンジャとヨーランディは南アフリカ出身のラップグループDIE ANTWOORDのニンジャとヨー・ランディが演じます。このふたりが非常に好み。チャッピーに対して母性を見せるヨー・ランディは完全に本作のヒロインと言っていいでしょう。非常に魅力的な女性に思えます。ニンジャは見た目も立ち位置もチンピラの悪党なのですが,何処か憎めない役回り。このふたりを見ていると善悪とは何かということが分からなくなってしまいます。単純な善悪二元論ではなく,善と悪が入り混じる如何にも人間らしい人間であると言えるのでしょう。南アフリカ政府に売り込む為にチャッピーを急襲する戦闘用ロボットを操る技術者ヴィンセント・ムーア役はヒュー・ジャックマン。悪役としての立ち位置も似合っています。チャッピーの開発者であるディオン・ウィルソンを演じるデーヴ・パテールとの貫録の差が素晴らしい。そして,ディオンとヴィンセントの務める会社の上司ミシェル役はシガニー・ウィーバー。この配役も良かったです。

 前半部分のチャッピーとギャングの交流も,後半部分のヴィンセントとの対決も,どちらも非常に楽しかった。個人的には前半部分の方が好みだったのですが,後半部分は被弾して瀕死のディオンとヨーランディを救うべく奔走するチャッピーの姿が印象的でした。アンドロイドでありながら,人間以上に人間性を持つことになったチャッピーに影響を与えたのがギャングのふたりというのは皮肉であります。得てして,そういうものなのかもしれませんけれども。いずれにしても,ニール・ブロムカンプ監督の作品らしい現代を諷刺しながらも娯楽映画として存分に楽しめる作品でありました。十分に満足です。
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2015年08月19日

ラン・オールナイト

〈2015年映画感想25本目〉
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ラン・オールナイト
RUN ALL NIGHT
2015年 アメリカ 114分
監督:ジャウマ・コレット=セラ
配給:ワーナー・ブラザーズ
出演:リーアム・ニーソン,ジョエル・キナマン,エド・ハリス,ボイド・ホルブルック,ブルース・マッギル,ジェネシス・ロドリゲス,ヴィンセント・ドノフリオ,コモン,ニック・ノルティ

 マフィアに追われる殺し屋の死闘を描いたアクション・スリラー映画です。主演がリーアム・ニーソンというだけで物語のほぼ全容が理解出来てしまうのが素晴らしい。同工異曲というか,見た目も中身も殆ど想像通り。しかし,それでいいと思ってしまうのも事実。或る種の王道を行く安心感に満ちた作品に仕上がっています。何よりも,リーアム・ニーソンの最強お父さんぶりが健在なのは嬉しい。今作でも愛する息子を護る為に殺し屋として長年仕えたマフィアのボスと袂を分かち,ひとり戦い続ける男の格好良さを見せつけてくれます。そのマフィアのボスが単なる主人というわけではなく,親友でもあるというのが趣深い。町中の全てが敵に回る中で一晩中逃げながら戦い続ける姿が歴戦の男という感じでありました。最後に息子との絆を取り戻すというのも定番ながら,涙を誘います。物語の最終盤を冒頭に持ってくる演出が実に効果的に思えました。

 リーアム・ニーソンはいつも通りのリーアム・ニーソン。それ以上でもそれ以下でもありません。家族を愛しながらも受け入れられない不器用な男の姿が非常に似つかわしい。勿論,如何なる状況下でも冷静に対処する戦闘屋としての魅力も存分に発揮してくれます。そのリーアム・ニーソンが演じるジミー・コンロンを息子の仇として追うマフィアのボス,ショーン・マグワイア役はエド・ハリス。親友との友誼と不肖の息子への愛情の狭間で揺れながらも,マフィアとしての誇りをかけてジミーとの訣別と復讐を選ぶ姿が切ない。尤も,ジミーとの直接対決ではその戦闘力の差が歴然としてしまっていましたけれども。代わりに,ショーンが雇った殺し屋アンドリュー・プライスの存在感は強烈。最新鋭の装備に身を纏い,冷酷非道な手段を躊躇なく選択するアンドリューを演じるのはコモン。人間味を感じさせない圧倒的な暴力の権化としてのジミーとの対峙は見応え十分。獲物を最後まで追い詰めるその執着心が本当に恐ろしかった。一方で腐敗した警察においてジミーを冷静な視点で追うハーディング刑事もいい味を出していました。ジミーとの奇妙な信頼関係が好みです。

 予想通りに期待を裏切らないリーアム・ニーソン映画でありました。分かっていても最後の演出は目頭が熱くなるものを感じてしまいます。血腥い作品でありますが,鑑賞後に何処か爽やかな印象があるのも素敵。堅気である息子には自分と同じ人殺しになって欲しくないという父親としての行動は今までの贖罪でありましょう。それは或る種の利己主義でもありますが,それでもなお父性の顕現と見ることも出来ます。いずれにせよ,殺し屋として,父として,リーアム・ニーソンの格好良さを全面的に押し出した作品でありました。十分に満足です。
posted by 森山樹 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年08月16日

シンデレラ

〈2015年映画感想24本目〉
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シンデレラ
CINDERELLA
2015年 アメリカ 105分
監督:ケネス・ブラナー
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
出演:リリー・ジェームズ,ケイト・ブランシェット,リチャード・マッデン,ヘレナ・ボナム=カーター,ステラン・スカルスガルド,ソフィー・マクシェラ,ホリデイ・グレインジャビー,ノンソー・アノジー

 シャルル・ペローの同名の童話を原作とするファンタジィ映画。というよりも,1950年のアニメ映画の実写化という方が適切なのかもしれません。いずれにせよ,物語の大筋としては原典通りのである為に語る部分は特段になし。個人的にはもう少し独自性を発揮してもいいのではないかとも思いますが,王道であるが故に安定した面白さを有しています。また,妖精の女王がシンデレラにかける魔法の演出は素直に魅力的。特に蜥蜴と鵞鳥がそれぞれ変身する従者が素晴らしかった。鼠の変身する馬も楽しいです。そして,何よりもシンデレラの破れたドレスが美しく生まれ変わる場面が最高に素晴らしい。まさに魔法の魅力を存分に発揮してくれています。定石通りの物語であるが故に余計に映像と音楽の素晴らしさは楽しめました。下手に悪趣味に走るよりもディズニー映画らしいというべきなのかもしれません。最近の作品にしては珍しく王子がきちんと王子だったことも逆に新鮮でありました。

 主人公のシンデレラを演じるのはリリー・ジェームズ。美人ではあるものの王道のシンデレラ像ということもあって印象は強くないです。寧ろ,完全に主役の座を食っているのが継母役のケイト・ブランシェット。あの邪悪な雰囲気は最高に素敵。我が子を想う母という言葉では弁護出来ないくらいの悪辣な所業で楽しませてくれます。実娘であるドリゼラとアナスタシアのぼんくらぶりを見ていると彼女の強引に過ぎる策略も理解出来なくはないのですけれども。いずれにせよ,負けを認めてそれでもなお幸せを求めるといった弱い姿を最後まで見せなかったのが良かった。昂然と胸を張って,悪役としての誇りを輝かせてくれたように思います。また,シンデレラに魔法をかける妖精の女王役はヘレナ・ボナム=カーター。この類の役はすっかりこの方の独壇場という印象があります。今回もその魅力的な佇まいで存分に楽しませてくれました。惜しむらくは何故彼女がシンデレラにそこまでの好意を見せるのかが描かれていないこと。原典通りといえば,それまでなのでありますけれども。王子の付き人である大尉役のノンソー・アノジーがいい味を出していたのも印象的でした。ステラン・スカルスガルドが演じる大公はやや損な役回り。彼なりに国を想っての献策だと思うのですけれどね。シンデレラ目線では悪役になるのは仕方がないところなのでしょうか。

 安心して鑑賞出来る映画としては十分に楽しめました。音楽も映像もともに素晴らしかったと思います。但し,それ以上に特筆すべきことがないのもまた事実。突飛な設定を付加する必要はありませんが,この映画なりの解釈は見せて欲しかったように感じます。此処まで著名な物語だからこそ,原典に忠実な作品に仕上げることもまた必要なことであるとも思うのですが,個人的にはやはり独自性を追求した作品の方が好みであります。その意味ではやや不満を覚えざるを得ませんでした。原典通りの作品ということなら過不足なく満足なのですけれどね。

 同時上映の『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』は番外篇としては十分な出来でした。何よりもエルサがくしゃみをする度に生み出されるスノーギーズの可愛らしさが最高。また,本篇で悪役を担ったハンス王子にきちんと鉄槌が下されるのも補完として良かったと思います。エルサとアナの姉妹仲の良さは本当に素晴らしい。今後予定されている本篇の続篇も楽しみにしたいと思います。
posted by 森山樹 at 17:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年08月13日

フォーカス

〈2015年映画感想23本目〉
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フォーカス
FOCUS
2015年 アメリカ 105分
監督:グレン・フィカーラ/ジョン・レクア
配給:ワーナー・ブラザーズ
出演:ウィル・スミス,マーゴット・ロビー,ロドリゴ・サントロ,ジェラルド・マクレイニー,エイドリアン・マルティネス,ロバート・テイラー,B・D・ウォン

 詐欺を題材としたクライム・サスペンス映画です。コン・ゲームとしての要素が色濃いのが非常に楽しい。詐欺は憎むべき犯罪のひとつでありますが,それは時としてまるで芸術のようにも思えます。騙されることの爽快感が本作の魅力でもありましょう。また,まるで流れ作業のように行われる掏摸の手口にも驚嘆させられます。実際にあそこまで完成度の高い掏摸というのもあるのでしょうか。因みに本作で披露された掏摸の技術は世界最高の掏摸師と称賛されたアポロ・ロビンスの指南に因るものとのこと。人間行動学を駆使して行われる掏摸の妙技を堪能することが出来ます。物語としては二部構成というのも面白い。常に仕掛けがある為に飽きることなく楽しめます。というよりも,真実が何処にあったのかが分からなくなるくらい。此処まで鮮やかに騙されると嬉しくなってしまいます。華麗なる詐欺の饗宴がたまらないです。

 天才詐欺師であるニッキーを演じるウィル・スミスと彼の弟子となる美貌の女詐欺師ジェスを演じるマーゴット・ロビーのふたりが主演。特にマーゴット・ロビーの美しさが光ります。前半部分では弟子としてニッキーの詐術を学習していたジェスが後半では同じ対象を巡る相手として再登場するのが面白い。このふたりの間にある想いが果たして本音だったのか,或いは詐術としての建前だったのかは最後まで議論の分かれるところでありましょう。個人的にはこの想いだけは本当であったと思いたいところではあります。ただ,個人的には後半の大富豪を巡る詐欺よりも前半の組織化された掏摸集団のほうが面白かった。特にB・D・ウォンが演じるリ・ユァンとの賭けにはすっかり騙されてしまいました。あそこまで入念な下準備をした上での演技というのが素晴らしい。何処までが当初の予定だったのかさえ分からないというのが楽しいです。知力の粋を凝らしての頭脳戦ということで全く息が抜けないのが素敵。登場する人物がみな胡散臭く思えてしまいます。まあ,実際に殆ど悪人ばかりが登場するのですけれども。しかし,B・D・ウォンの胡散臭さは格別ですね。大好きです。

 それ程期待をしていたわけではなかったのですが,予想外に楽しめた作品でした。やはりこの種のコン・ゲームは大変に好みであります。尤も,騙される爽快感を味わうのは創作の中でだけであって欲しいものでありますけれども。マーゴット・ロビーの艶やかな美しさも堪能出来る華麗で危険な遊びが楽しめる作品であります。頭に血の通っていない感じがする破壊と暴力に満ちた作品も好みですが,このように知恵を凝らした頭脳で勝負する犯罪映画というのももっと増えて欲しいものです。本当に楽しい作品でありました。大満足です。
posted by 森山樹 at 07:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)