2015年05月31日

機動戦士ガンダムTHE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル

〈2015年映画感想13本目〉
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機動戦士ガンダムTHE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル
2015年 日本 62分
監督:今西隆志
配給:松竹
声の出演:田中真弓,藩めぐみ,浦山迅,銀河万丈,三宅健太,渡辺明乃,津田英三,恒松あゆみ,喜山茂雄,沢城みゆき,池田秀一,大塚明夫

 安彦良和による『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』のアニメ化作品の先行劇場上映です。『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』はTVアニメ『機動戦士ガンダム』の再構築作品でありますが,今回のアニメ化はその中でもシャア・アズナブルことキャスバル・レム・ダイクンとセイラ・マスことアルテイシア・ソム・ダイクンの過去に焦点を当てたもの。全4話が順次公開される予定となっています。実際のところ,『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』はおろか,『機動戦士ガンダム』もTVアニメ版と劇場版を問わず,触れたことがなかったりします。概略や登場人物に対する一般的な知識は有しているので問題なく楽しむことは出来ましたが,勿論原作となった作品に対する造詣が深い方がより楽しめることでありましょう。〈機動戦士ガンダム〉とは言いながら,モビルスーツが実戦に投入される以前の物語である為に戦闘場面はそれ程ありません。寧ろ,ジオン公国の前身であるムンゾ自治共和国における,地球連邦からの独立を巡る政争こそが中心になっている感があります。父ジオン・ズム・ダイクンの急死から始まる混乱に翻弄されるキャスバルとアルテイシア兄妹の運命が描かれます。

 物語の中心となるのは勿論キャスバルとアルテイシアということになりますが,それ以外にもザビ家やそれに対抗するジンバ・ラルの息子ランバ・ラル,そのランバ・ラルの恋人であるクラウレ・ハモンらが活躍を見せてくれます。特にクラウレ・ハモンの美貌と才気には惚れ惚れしてしまいます。一介の歌姫であるにも関わらず,正規の軍人以上の力量を見せつけてくれました。キャスバルとアルテイシアの母であるアストライアの旧友という立ち位置も非常に重要でありましょう。ザビ家では特にキシリア・ザビの出番が目立ちます。此方もその凶悪な美貌は特筆もの。対立した次兄サスロの暗殺に関わった描写も垣間見え,その陰謀家としての存在感を存分に発揮しています。勿論,ギレン・ザビとドズル・ザビも相応に出番は多い。特にサスロの死に衝撃を受けたドズルの激情はやや好ましく思えました。ギレンの冷徹な立ち振る舞いも格好いい。何故,日本趣味に耽溺しているのかは不明ですけれども。幼き日のキャスバルとアルテイシアは大変可愛らしい。幼くして才気を見せるキャスバルには後のシャアの面影を見ることが出来ます。アルテイシアは年相応のあどけなさが印象的でした。

 第1話となる今回はランバ・ラルとクラウレ・ハモンの尽力によって,キャスバルとアルテイシアが地球に逃がされるところまでが描かれました。アストライアとの恐らくは永遠の別れが悲しい。しかし,最終盤のガンタンクでの戦闘は非常に見応えがありました。此処までガンタンクが格好良かったのは〈機動戦士ガンダム〉史上でも稀なのではないでしょうか。何はともあれ,やはり安彦良和の描く絵がアニメーションとして動くことに強い感慨を覚えます。やや戯画化された描写もそのままですが,これは好き嫌いが分かれるかもしれません。いずれにせよ,〈機動戦士ガンダム〉好きとしては非常に楽しめた作品でした。モビルスーツ開発における秘話が明かされると予告される第2話を期待したいと思います。
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2015年05月30日

劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス

〈2015年映画感想12本目〉
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劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス
MUUMIT RIVIERALLA
2014年 フィンランド 77分
監督:グザビエ・ピカルド/ハンナ・ヘミラ
配給:ファントム・フィルム
声の出演:高山みなみ,大塚明夫,谷育子,かないみか,子安武人,佐久間レイ,小林優子

 フィンランドの児童文学〈ムーミン〉シリーズの原作者トーベ・ヤンソンの生誕100年を記念して製作された長篇アニメーション映画です。なお,日本版の声の吹替えはTVアニメ『楽しいムーミン一家』の面々が今回も担当しています。但し,『楽しいムーミン一家』とは異なりフィンランド本国での製作ですので,『楽しいムーミン一家』を期待すると少々当てが外れるかもしれません。キャラクターデザインも原作寄りという印象が強いです。逆を言えば,原作小説や漫画版好きならば,存分に楽しめることでありましょう。実際にこの作品の物語は漫画版を原作としています。南の海にあるリゾート地リヴィエラを訪れたムーミン一家が巻き起こす騒動が楽しいです。割とムーミン一家の所業は酷いのですけれど,それでも最終的には綺麗にまとまるのが素敵。フローレンの伏線が最後に生きてくるとは思いませんでした。因みに原作では終始スノークのお嬢さんと呼称されていましたが,この映画では『楽しいムーミン一家』に合わせてフローレンとされています。

 主人公のムーミントロールを演じるのは高山みなみ。『楽しいムーミン一家』を楽しんでいた身としては,ムーミントロールに限りませんが,当時の声優陣が一番馴染みます。20年近く前の作品なのに今も声の演技が出来るというのが素晴らしい。フローレンのかないみかもはまり役だと思います。今回のフローレンはセレブリティに目がくらみ,プレイボーイに夢中になるという描写が目立ちましたが,或る意味で年頃の女の子らしいと言えるのでしょう。最後にはきちんとムーミントロールと仲直り出来ますしね。リトル・ミイはミムラ姉さんとともに海賊船の捕虜としての登場というのが面白い。原作小説とは異なり,これがムーミン一家との出会いということになっています。その悪戯好きで天邪鬼な性格は大好き。なお,今作においてはスナフキンとミムラ姉さんは異父姉弟という解釈には立っていないようです。そのスナフキンは殆ど出番がありません。というか,ムーミン一家のリヴィエラ行に同行していないので,冒頭と結末以外に登場のしようがないのですよね。それでも台詞さえもなかったスニフに比べればまだしもと言ったところでありましょう。このあたりは原作がそうなのか,或いは日本とフィンランドではスニフやスナフキンの扱いが異なるのか気になるところです。

 何はともあれ,〈ムーミン〉好きとしては素直に満足。物語としても十分に楽しめます。ムーミンパパの割と無責任さが目立っていた気がしますが,それを含めて最後には事態を収拾させるムーミンママが素敵です。モンガガ侯爵やオードリー・グラマー,ピンプルといったゲストキャラクターもそれぞれにいい味を出していました,個人的には海賊一味が結構お気に入りだったのですけれどね。特に原作好きにはたまらない作品であります。フィンランドのアニメーションという目新しさも興味深かった。定期的に製作して欲しいなあと思います。その際にはやはり『楽しいムーミン一家』の面々で吹替えであることを願います。
posted by 森山樹 at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年05月10日

エクソダス 神と王

〈2015年映画感想11本目〉
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エクソダス 神と王
EXODUS: GODS AND KINGS
2014年 アメリカ 150分
監督:リドリー・スコット
配給:20世紀フォックス
出演:クリスチャン・ベール,ジョエル・エドガートン,ジョン・タトゥーロ,アーロン・ポール,ベン・メンデルソーン,マリア・バルベルデ,シガニー・ウィーバー,ベン・キングスレー

 旧約聖書の一篇「出エジプト記」に材を採った歴史スペクタクル映画です。主人公は出エジプトのユダヤ人指導者モーゼとユダヤ人を弾圧するエジプト王ラムセス2世のふたり。出エジプトにおけるエジプト王が誰であるかは歴史上定かではありませんが,確かにラムセス2世をそのファラオとする学説もあります。但し,劇中でピラミッドやスフィンクス建造にユダヤ人奴隷が携わっていたというのは明確な誤り。このことからも歴史映画ではなく,あくまでも歴史に材を採った娯楽映画と見るべきなのでありましょう。なお,有名な出エジプトに際して海がふたつに割れるという有名な逸話はモーゼが起こした奇跡ではなく,地震に起因するものとされているのは面白い。そもそもがモーゼが神の声を聴くようになった契機が山から滑り落ちた際に頭部を強打して以降となっているのが地味に酷い。ユダヤ人の神がエジプトの民に対して起こす十の災厄もあまりに苛烈でエジプト人に同情してしまいます。敬虔なキリスト教徒から批判されて然るべき内容に思えました。純然たる娯楽映画としては面白かったのですけれども。

 主人公モーゼを演じるのはクリスチャン・ベール。高邁なユダヤ人指導者としての側面もあるのですが,劇中では割と俗物的な印象が強いです。ラムセス2世とは幼馴染であり,一時は国王と将軍という関係であったこともあり,因縁が強調されます。このあたりは原典通りと言えば,それまでですけれども。神の声を聴けるようになってからも盲目に神を信じるのではなく,自問自答を繰り返し,ユダヤ人を導く姿が印象に残ります。戦う指導者として,巨大な津波を背景にしたラムセス2世との戦車での戦いは見応えがありました。そのラムセス2世を演じるのはジョエル・エドガートン。序盤はモーゼとの間に友誼を育みながらも,モーゼがユダヤ人であることが判明した時点で追放するなど悪役的な立ち位置にありました。しかし,中盤以降はユダヤ人の神が齎す十の災厄に翻弄される被害者という描かれ方をしている感しかありません。確かにユダヤ人を奴隷として扱い,その解放を頑なに拒むというラムセス2世の態度は現代の視点から見れば暴君に他なりません。しかし,その咎をエジプトの民全てに押し付けるユダヤ人の神のやり方の方が寧ろ邪神じみたものを感じてしまいます。このあたりは意図されたものなのでしょうか。その場合はユダヤ人の神に対する痛烈な批判ということになります。

 歴史映画としてはともかくスペクタクル映画としての見せ場は十分。特に十の災厄がエジプトを蹂躙する様は見応えがありました。また,出エジプト最中のモーゼとラムセス2世による戦いも非常に盛り上がります。長丁場の作品にも関わらず,全く飽きさせなかったのは素晴らしいです。その視点からは素直に満足出来たと言えるでしょう。但し,歴史映画という観点からは気になる描写が多かったのもまた事実。妙にユダヤ人の神を抱く宗教に対する批判が垣間見えたことからも物議を醸し出しそうな作品でありました。何も考えずに純粋なスペクタクル映画と捉える方が吉なのかもしれません。
posted by 森山樹 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年05月08日

ワイルド・カード

〈2015年映画感想10本目〉
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ワイルド・カード
WILD CARD
2015年 アメリカ 92分
監督:サイモン・ウェスト
配給:ライオンズ・ゲート/クロック・ワークス
出演:ジェイソン・ステイサム,ドミニク・ガルシア=ロリド,マイケル・アンガラノ,ソフィア・ベルガラ,マイロ・ヴィンティミリア,ホープ・デイヴィス,アン・ヘッシュ,スタンリー・トゥッチ

 1986年に公開された映画『ビッグ・ヒート』のリメイク作品。と言っても,『ビッグ・ヒート』は未鑑賞なので比較対照することは出来ません。主演がジェイソン・ステイサムというだけで内容は推して測るべきでありましょう。元特殊部隊の隊員を主人公に据えたクライム・スリラー・アクション映画です。基本的にはジェイソン・ステイサムの大暴れを楽しむ作品と考えて間違いありません。暴行された元恋人の依頼を受けて,渋々ながらも復讐に立ち上がる主人公ニック・ワイルドの姿が描かれます。但し,目新しいのはこのアクションとは別軸として彼を慕う若者サイラスとの心の交流が存在するということ。このサイラスとの交流が物語を単なる暴力的なものだけに終えていないのが興味深い。堕落した自分から脱却すべくラスベガスを去る結末にはいささかの清涼感も感じさせました。この種の作品にしては珍しく後味の良ささえ覚えます。尤も,凄惨な場面は凄惨なのですけれども。一方でやや内容が散漫に思えたのも事実です。主軸が確立されていないというべきかもしれません。

 ニック・ワイルドを演じるジェイソン・ステイサムはいつも通り。敢えて銃を使わないことに拘り,手近にあるものを武器として戦う姿が描かれます。何故,銃を使用しないのかは劇中では説明されなかった気がします。その圧倒的な強さがたまりません。マフィアに襲撃されてもたったひとりで撃退するくらいですから。一方でサイラスとの交流を経て,ラスベガスを去る為に大金を賭け,引き際を誤るという姿も見せてくれます。個人的にはジェイソン・ステイサムには肉体的にも精神的にも最強の男であって欲しいと思っているので,何処となく消化不良感を抱いたのは事実。序盤では友人の依頼を受けて,演技をする処世術も見せてくれますが,これらの人間的な描写はあまり機能していなかった気がします。自尊心を奪う側と自尊心を奪われる側との苛烈な戦いという視点から見ると冒頭の演技はかなり意味が大きいのですけれどね。脇役陣は然程魅力に欠けるので結果的にはジェイソン・ステイサムだけを楽しみ作品になってしまっています。ラスベガスの大物のひとりであるベイブを演じたスタンリー・トゥッチは結構格好良かったけれどね。

 ジェイソン・ステイサム主演の映画にしてはややスケール感に乏しいのは残念。圧倒的な強さだけを見せる映画でいいと思うのですよね。とは言え,サイラスとの交流に感化されて,ラスベガスを去るニック・ワイルドの姿にはしがらみから解き放たれた爽快感を覚えるのも事実。この妙な味わい深い結末は決して嫌いではありません。問題はジェイソン・ステイサム好きがジェイソン・ステイサムの大暴れを求めて鑑賞する映画にも関わらず,求めるジェイスン・ステイサムとはやや方向性の異なるジェイソン・ステイサムの姿が描かれているということでしょう。その意味においてはやはり不満の残る作品であったと言わざるを得ません。決して悪い作品ではないと思うのですけれどね。
posted by 森山樹 at 06:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)

2015年05月04日

チャーリー・モルデカイ/華麗なる名画の秘密

〈2015年映画感想9本目〉
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チャーリー・モルデカイ/華麗なる名画の秘密
MORTDECAI
2015年 アメリカ 106分
監督:デヴィッド・コープ
配給:ライオンズ・ゲート/KADOKAWA
出演:ジョニー・デップ,グウィネス・パルトロー,ユアン・マクレガー,ポール・ベタニー,オリヴィア・マン,ジョニー・パスボルスキー,マイケル・カルキン,ウルリク・トムセン

 キリル・ボンフィリオリによる同名小説を原作としたアクションコメディ映画です。なお,原作は読んでいないので比較対照することは出来ません。盗まれたゴヤの名画を巡る騒動が描かれますが,基本的には上滑り感を感じます。局所的に面白い部分はあるのですが,全体としては空回りしている印象が強いです。また,下ネタを含む品のない描写が目立つのも個人的な評価を下げる一因でありましょう。原作をどの程度再現しているのかは分かりませんが,映像化するにあたっての改悪であって欲しくないなあと思います。人間関係を含む物語そのものは結構好みなだけに,演出によって印象が悪くなってしまうのは残念です。本当に面白さを求めて製作しているのかと疑問を抱いてしまうくらい。意図的につまらない演出を施しているようにさえ感じてしまいます。二転三転する展開は飽きを来させないのですけれどね。何もかもを演出がぶち壊しにしてしまっています。

 破産寸前の貴族で美術商のチャーリー・モルデカイを演じるのはジョニー・デップ。基本的には身なり,というか口髭だけを気にするダメ人間ですが,こういう役はジョニー・デップによく似合います。そのチャーリー・モルデカイの機知に富んだ妻ジョアンナ役はグウィネス・パルトロー。此方もはまり役。但し,口髭に対するモルデカイの拘りとジョアンナの嫌悪感がまるで面白くないというのは残念。本当につまらなかった。モルデカイ夫妻の大学時代の同級生で現在はMI5に所属するマートランド警部補を演じるユアン・マクレガーとの微妙な三角関係は楽しかったです。完全にマートランドには芽がないと思うけれども。ユアン・マクレガーは格好いいですね。しかし,本作で一番目立っていたのはポール・ベタニーが演じるモルデカイ家の忠実な従者ジョック・ストラップ。彼に尽きます。如何にも英国の有能な執事といった印象の万能人間でその屈強さは特筆もの。モルデカイの危機を幾度も救いますが,そのモルデカイによって負傷させられることが多いのが楽しい。尤も,その都度簡単に復活するのですけれども。また,ジョック自身も何処でも女性と関係を持つ絶倫故に騒動に巻き込まれてしまいます。それでも,モルデカイ家に対する忠義がぶれることがないのが素敵。ジョックがいなければ本作は本当に見どころがなかったかもしれません。ゴヤの名画を巡る悪役陣もそれ程魅力は感じなかったですしね。

 面白くないわけではないけれど,残念さが先に立ってしまう作品でありました。物語の本筋そのものは結構好みなので,演出の仕方さえ良ければなあと思ってしまいます。とにかく,モルデカイよりも製作陣の口髭への妙な拘りが全てを台無しにしてしまったのではないでしょうか。原作通りということであれば,仕方ないかなあとも思うのですけれど。或いは英国紳士というものを笑いの種にする一種の象徴にしたかったのもかもしれません。いずれにせよ,退屈はしないまでも満足には程遠い作品でありました。それなりに期待はしていたのだけれどなあ。
posted by 森山樹 at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画感想(劇場)